黒瓜時子(くろうり・ときこ)は特異体質の持ち主である。. 小さい頃、戯れに入った廃屋に数日間閉じ込められ生死の境を彷徨って以来、彼女には人ならざるモノの"密室"に、時折囚われるようになってしまった。. 空は薄曇り。. 風は吹いていないのに、指先がしびれるように寒い。. 町中が身をちぢこめているような、そんな季節。. 今日も時子は歩く。どこへともなく、あてどなく。. それが時子の日課だった。. 歩きながら、電柱に貼られている違法広告を破いてみたり、落ちているチラシごみを屑籠に突っ込んだり。. それは時子の趣味だった。. (こんなものを見て、電話する人などいるのだろうか?). 破いた広告をしげしげと見つめてみる。. "どうにもならないお悩みは、霊障かも知れませんよ! 詳しくはtel. ▽‐ ××". ……どうにもこうにも胡散臭さしか感じない。.